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2004年12月21日

icon恵子くん来訪04


 木澤くんが寛大な心の持ち主で本当に良かった。
 持参した金時あられを怖ず怖ずと差し出して、丁重に丁寧にお詫びした。
「申し訳ない。すっかり動転していたもので、わけもわからず、気がついたときには、電話を切っていたんだよ」
「まあまあ、気にしなさんな。人の生き死にの話となれば、びっくりするのも仕方がない。君は恵子さんとは今でもつきあいがあったんだからね、なおさらだろう」
「つきあいがあると言っても、賀状のやり取りぐらいのもので、実際に会うのは何年に一度かってな程度のことでね。たまたま、つい先日も彼女がぷらっと寄ってくれて、二人で高部の想い出を肴に一杯二杯傾けたところだったもので、どうもね、亡くなったなんて急に言われて混乱してしまったわけですよ。無様な姿をお見せしてつくづく申し訳ない。考えてみれば、昔から君はおれのような偏屈にも寛容だったね」
「何にしても、精進落としでも言うのか、供養だと思って、一杯やろうじゃないか」
 そんなわけで、呑み始める。恵子くんと良男くんの想い出を語り合う。奥方も最初は同席していたけれど、酔いが回って、話題が、同級の連中の噂話から小泉極悪政権や近頃の物騒な事件の数々などに及ぶに至り、いつの間にか彼女は座を外れていた。この場で泥酔してしまっては、何をしにきたのかわからなくなってしまう。程々のところで切り上げて、家路につく。家路といったって、十分ほどの距離でしかない。ぶらぶらと歩きながら、道行く人々を眺める。老人とは色が違うね、衣類や自転車、何もかも。勿論、真っ赤な服を着て真っ赤な鞄を持って真っ赤な自転車に乗っているような人がいるわけではない。けれども、どこかしら、我々老人とは色が違う。だからどうなんだ、ということではないけれど。
 おんぼろ我が家に近づいた。遠くから眺めると、やはり、家までも老人の色である。と思ったが、庭の隅にちらりと鮮やかに桃色の花が咲いている。近づいてみると、些か元気がないようではあるものの、午後の遅い光の中で彩度が際立つ美しさだ。この花を恵子くんに供えよう。

投稿者 nasuhiko : 2004年12月21日 11:46

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