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2005年04月19日
交換音楽08
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田村師匠来訪。インフルエンザで寝込んでいる折に大変お世話になったことを、今頃になって、しかも、先方からお越し頂いたところで、御礼を申し上げる。全く筋の通らぬ話でお恥ずかしい限り。
「最近、ぱっとしないようですね」老耄日記を懲りずに読んで下さっておるのである。忝ない。「何だか、くさくさしましてねえ。陽気が陽気になってきたって言うのに、気が晴れませんな。どうも躰の方が本調子じゃないもので、気分も、何とはなしに沈みがちなんですよ。まあ、寧ろ、このぐらいの方が老人らしくて丁度良いぐらいかもしれませんがね」「無理してはしゃぐこともないじゃないですか。自然にしているのが一番ですよ」優しいお言葉である。不覚にも涙が出そうになった。
考えてみれば、気が晴れないということを気にする余り、ますます気が滅入るという悪循環に落ち込んでいたことは確かである。それより何より、話し相手がいるということが、何とも有り難い。独りでいる時だって、独り言は滝のように零れ落ちるし、宇宙猫や木々や草花、鳥なんぞに向かって話し掛けたりしてはいるわけで、全く口を開かないというわけではないけれど、生身の話し相手がいるのとは大きに異なるのである。しかも、師匠は聞き上手というのか話し上手というのか、口重の老い耄れから言葉を引き出すのが大変巧い。あれこれと由無き事を遣り取りするうちに、すうっと心が晴れていくのが感じられる。感謝至極。勿論、早い時間から傾けた澤乃井が舌と心を滑らかにしてくれたことも忘れてはならない。暫く振りに、気持ち良く、心底美味しくいただけましたとも。
師匠が本日貸して下さったのは、『アリーナ』という、水色に薄い緑を混ぜたような何とも上品な色合いの美しい紙のケースに入ったアルバムである。「心が落ち着きますよ。いい感じにリラックスできます」と仰る師匠の言葉に偽りがある筈などない。アルヴォ・ペルトという、名前すら耳にしたことのない、現代の作曲家の作品であるけれど、妙な不協和音や仕掛けなどない、淡々と静けさの中に進む音楽である。現代音楽ということで聞く前に身構えてしまった己が莫迦みたいである。いやあ、素晴らしい音楽ではないか。空気が透明になっていき、もわもわと淀んでいた気持ちなどどうでもよく思えてくる。狭量な自分がどこかに飛んでいってしまった。
私の方からも、今回はクラシックだけれど、少しは現代的なような、同じく透明で静かな、高橋悠治のバッハをお貸しした。タムゾー先生の耳に合いますかどうか。
春の月 音降り注ぎ 心澄む
『アルヴォ・ペルト: アリーナ』 高橋悠治『プレイズ・バッハ
』
投稿者 nasuhiko : 2005年04月19日 19:05
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