« さようなら、貴ノ花02 | ホーム | ハバネロ16 »
2005年06月02日
さようなら、貴ノ花03
![]()
何となく貴ノ花のことが気にかかる。近年、この、何というか、くよくよ病が悪くなる一方で、何かあると、すぐにくよくよくよくよしてきて、そのくよくよが、頭からというのか、心からというのか、どうにもこうにも離れなくってしまう。貴ノ花とちゃんとした面識があるわけではない。小さい頃に少年花田を見掛けただけなのにね。何故だか、くよくよ、とね。そこで、ふと閃いた。ここでうじうじしていても埒が明かない。いっそのこと青山葬儀所へ行ってみようか、と、えっちらおっちら家を出たじじいである。引っ越した先の部屋は新橋の辺りだったのだから、宝仙寺でやってくれれば、御近所の人たちにも喜ばれるだろうにね、私だってその方が有り難いよ、などとぶつぶつ呟きながら、どうにかこうにか駅まで辿り着いたのだが、駅に流れ込む人の群れを見て、たじろいだ。態々、電車を乗り継いで、真っ赤な他人である老い耄れが、斎場に顔を出すのは如何なものだろうか。そんな気がし始めた。券売機の前で暫し逡巡したが、やはり、参列するのは止すことにした。冷静になって考えてみれば、私なんざまるでお呼びでないのである。頭の捩子が緩んでいると、訳の判らない衝動に従って行動してしまうことが、間々ある。情けないことである。
折角、出掛けるつもりで駅まで来たのだから、と、末廣でも冷やかそうかとも思ったけれど、黒尽で寄席てえのもどうかねえ。嫌だねえ、陰気なじじいが来ているよ、などと、板の上からからかわれたりしかねない、と不安になり、それも中止。ぶらぶら歩きながら、開けたばかりで未だ客のいない福寿庵へ。
「あれ、これからお葬式ですか。親父とは関係ない筋ですかね」などと息子くんが尋ねる。此方人等、黒尽ですからね。誰の目にもそれらしく映るし、そもそも、誰の目にもそれらしく映るということが、喪服の一つの役割でもあるのであり、致し方ないところ。うむ、だの、いや、だの、と、ぼんやりと答えていたら、「貴ノ花が亡くなりましたねえ。自分は、初代若乃花……あのぉ、昔の二子山親方ですね……の息子さんと、野球チームで一緒だったことがあるんですよ」などと宣う。若乃花の息子さんですか。ううむ、誰のことなんだろうか。先代の若乃花にはお嬢さんがいらっしゃって、二代目の若乃花を婿にもらったのだったかしら。あやふやな記憶を掘り返してみるが、判然としない。酔いも手伝い、曖昧に曖昧を積み上げ、頭の中は渾沌。それにしても、私という人間は、昼前から、喪服に身を包み、蕎麦屋で抜きに澤乃井ときたもんだ。一体、何をやっておるのだろうか。
投稿者 nasuhiko : 2005年06月02日 19:11
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://bokenasu.net/mt/mt-tb.cgi/200
このリストは、次のエントリーを参照しています: さようなら、貴ノ花03:
» 花田家の葬儀 from ブログで情報収集!Blog-Headline
「花田家の葬儀」に関するブログ記事から興味深いものを選んでみました。ぜひ、読み比... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年07月11日 21:56